農業に関する情報を発信します
2023.7.25
青果流通の現場では、生産者が販売品の出荷伝票を手書きで記入、営農指導員が集荷された生産物と出荷伝票の内容を比較し、目視で数量の一致を確認、販売先毎に伝票を手書きで作成しています。
この作業は、生産者に負担をかけるだけでなく、JA営農指導員の本来の業務である栽培指導時間の減少を招くなどの課題を引き起こしています。
そこでJAひろしま様では、スマートフォンアプリやクラウドシステムを用いて集出荷の工数省力化を可能にする、みどりクラウド『らくらく出荷』を導入し、負担の軽減を実現しました。
JAひろしまの橋本様、吉川様、ならびにJAひろしま様に出荷を行なっているグリーンカウベル(農業法人)の水岡様にお話を伺いました。
――集出荷作業における課題とはどのようなものだったのでしょうか。
これまでの集出荷作業は、市場出荷物の取りまとめや検品に人員、時間、労力が非常にかかっており、出荷をする生産者、集荷をするJAの集荷担当者双方にとって負担となっていました。
生産者には、伝票と段ボールの2つの記入作業があり、集荷担当者は、その伝票をもとに数量を目視で確認し、販売伝票を書き起こしていました。
さらに事務所に戻ってからすべての販売先にFAXを送るなど多くの作業があります。場所の制限もあり、人の手に頼った作業であったため、時間がかかり、間違いも起きやすい状況でした。
――どのように課題を解決したのでしょうか。
このような集出荷作業における課題を解決してくれたのが、みどりクラウド『らくらく出荷』です。
『らくらく出荷』の導入で手書きの紙伝票を使用することがなくなり、作業時間の短縮と労力の削減が達成され、また人的エラーが発生しにくい状況を作ることが出来ました。場所を問わず情報を確認できるのも非常に便利です。これから『らくらく出荷』の対応品目を増やしていき、JAひろしまの中でもしっかりと拡大させていきたいと思っています。
――みどりクラウド『らくらく出荷』を導入して寄せられた感想をお聞かせください。
アプリから出荷履歴を閲覧することで、圃場ごとの売上や収量を確認できるところが便利という声が上がっています。また、『らくらく出荷』では、伝票の記入の代わりにシールを段ボールに貼り付けるという作業が発生しますが、この作業は今までの産直への出荷で慣れていただいていますので新たな負担とはならずに導入を進められています。
――みどりクラウド『らくらく出荷』の利点をお聞かせください。
時間と労力が削減できたことはもちろんですが、いつ、誰が出荷に来たのかをタブレットで集荷担当者から確認をできるようになり、より迅速に生産者へのサポートをおこなうことが可能になりました。
――みどりクラウド『らくらく出荷』を利用した感想をお聞かせください。
今まで、出荷先別伝票の用意や、出荷先ごとに異なる段ボールへの記載事項の用意のため、それぞれの手間が負担となっていました。しかし、『らくらく出荷』の導入によって、これまで課題となっていた紙媒体でのやり取りは減り、生産者番号、規格などを手書きする必要もなくなりました。シールをダンボールに貼るだけになったことで、出荷時のダンボール作りの作業スピードが上がり、出荷作業全体の時間短縮につながりました。
――みどりクラウド『らくらく出荷』への要望がありましたらお聞かせください。
アプリ内でより詳細に出荷先別の出荷記録が見られるようになるといいと思います。また、スマホで出荷物を読み込む際の精度向上に期待しています。
――今後の展望について教えていただけますか。
みどりクラウド『らくらく出荷』は、JA広島中央という組織の時に作っていただいたシステムです。私たちは2023年4月より県内9つのJAが合併をして新たにJAひろしまという形に生まれ変わりました。この9つのJAは、集出荷作業に関してまったく同じ課題を抱えています。このシステムを圏域にしっかり広めることによって、よりスケールメリットを生かした生産販売に役立てていけると思っており、その辺りも期待をしています。
――開発のきっかけについて教えてください。
JA広島中央様より、集出荷作業に関するご相談をいただいたのが開発のきっかけです。
特に課題となっていたのが、集出荷作業に関わる業務の営農指導員への負担です。この負担により、栽培指導に充てる時間が圧迫され、指導員の定着化とスキル向上が妨げられていました。
結果、営農指導員の離職リスクがあがり、農家への技術伝達力が低下していたのです。
――みどりクラウド『らくらく出荷』稼働の現状はいかがでしょうか。
『らくらく出荷』では、この集出荷作業をDX化し、紙で作業をおこなっていた以前と比較して、大幅な省力化を実現しました。現在はJAひろしま大和アグリセンターで白ネギとホウレンソウを対象に導入しています。
――今後の展開を教えてください。
今後、JAひろしま様では大和アグリセンターでの対象作物の追加に加えて、他のアグリセンターへの展開、また全国の他のJA様への展開を目指しています。
新しいサービスだからこそ、密にユーザー様と連携を取りながらご要望のあった機能につきましては、随時アップデートを続けています。
また『らくらく出荷』の取り組みの副産物として、青果物が梱包されたそれぞれの段ボールに対し、個体識別番号が付与されます。これにより、青果物の段ボール単位でのトレーサビリティを実現することが出来るようになりました。
今後もみどりクラウドでは、データの活用によるスマートフードチェーンの実現や付加価値の高い青果流通に寄与していきます。